ティルナノーグ【Tir Na Nog】に憧れて ※カテゴリから見て下さいね。新しい順だけど小説が並ぶので読みやすいです。_(._.)_あ、不思議な写真もよく撮れるので文中に貼りますね。

頭の中で奏でる世界。命尽きる前に音符に書き出したいです。ケルト神話の神々の安寧の地ティルナノーグ。【常若の国】と呼ばれるその地に想いを馳せながら現世を綴ります。

【君を捜して編2】心細い朝 〈いつもの朝なの? 副題:心細い朝だけど、僕が守るんだ〉

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◇毎日当たり前に繰り返していた幼馴染み〝みなみ〟ちゃんとのドタバタ劇が朝日の中で唐突に赤い水面に沈んで消えた。 ◇

夜明けの朝靄の中、道の端に横たわる影がモコモコと蠢く。

「ふわわ、わあ〜」
欠伸混じりの第一声。
「おやー!」と飛び起きる。
「〝みなみ〟ちゃん、僕たちどうしたの?」
と、〝ゆうや〟の声。

周りを見渡す“ゆうや”。
“ゆうや”は、大きな道の端に横たわっていた。

そう!“みなみ”ちゃんは?と振り向くと“みなみ”ちゃんが居た。
“みなみ”ちゃんが居る事が分かり“ゆうや”は元気になる。

「パン屋!そうパン屋だよ、〝みなみ〟ちゃん」
〝ゆうや〟の声で〝みなみ〟も、
「パン屋!パン屋!」と騒ぎ出す。

「ちょっと待って!〝みなみ〟ちゃん」

あの時〝みなみ〟ちゃんが大通り渡りながら立ち止まったとき、
ダンプカーが迫ってて僕は危ないと“みなみ”ちゃんに叫びながら飛びついたんだ!
そこまでで記憶が途切れてる。

〈カランカラン、プワプワン、カランカラン、カカッカと、回転し終えた硬貨の音が
頭の中に木霊する。。。あれは。。。〉

道端に座って、〝終わり〟の瞬間を回想する〝ゆうや〟の後ろから声がした。
「ほほお〜、珍客だね!迷い人だね。」
「終いの瞬間を自力で思い出したようだね、強いエーテルの臭いが
するね〜」
「そんな道端に居たら迷惑だよ!あたしの家に来な!」
淡々と言葉を投げる方に振り向くと、腰の曲がった老婆が
和やかな笑みを浮かべ立っていた。

エーテルって何よ???

と、その時、足先。。。目の前の道を馬車?が、〈どーーっ〉て埃を
撒き散らしながら走り去る。
馬車?;馬のような豚に引かれていた。。。

「え〜っ!見た見たよね、“みなみ”ちゃん」
「見た見た!足の長い豚さんね」

朧気ながら、異世界。。。とじわじわと実感。

「あーも、お若いのジレッたいの〜!そこは危ないからあたしの
家に来なさい」

周りを見回すと、舗装されていない道に沿って石積みした家が
連なり、慣れ親しんだ町並みとは別物であるのが分かる。

急に心細くなり、
「〝みなみ〟ちゃん、お婆さんの家にお邪魔しようよ」
と話してお婆さんについて行くことにする。

石積みの町並みをテクテク歩く。石積みの家の密集度合いが上がり、道も迷路のように細く入り組んできた。
いつからか空気の匂いに卵が腐ったような硫黄臭が漂い始めている。

〝みなみ〟ちゃんが
「お婆さんに聞きなよ、どこまでテクテクするのか」と、プンプン気味に僕をつつく。

「おば。。」と声を出そうとしたら、
「ホレ、着いた着いた」とお婆さんが手招く。

良かった〜“みなみ”ちゃんが草臥れて騒ぎ出す所だった。
ふ〜助かった!

お婆さんが手招くのは、周りの石積みの家よりは一廻り大きい
三階建ての家だった。石塀が取り囲む門の開き戸を開けて手招く。

すい〜っと門を潜ろうとする僕に、
「何か嫌な雰囲気だねーって」〝みなみ〟ちゃんが耳元で囁く。
お婆さんが、横から
「さ、さ、遠慮せずに入りなさい」
と門の開き戸の先の玄関扉に更に手招く。
誰か居るのか自然に玄関扉が、〈ギギギ〜〉と内側から開く。

「さあ、中は暖かいから入りなさい!」と、優しい笑み。

ふらふらっと、門を入り、玄関扉の中に入る。
家の中、左手は階段、右手は大きなテーブル、真ん中奥で
暖炉の篝火が揺れている。

暖かそうだ〜“みなみ”ちゃんを温めてあげれる、良かった。
そう考えてると、お婆さんも中に入る。
そして後ろ手にドアを閉めると、
唐突に
「エコイクエコイクマールンバ慈悲無く支配するモノよ、
古き盟約に則りその力を発現せよ〜慈悲無き呪縛の棘の蔓」と
呟く。

〈ガキーッと身体が固まる、エ〜身体が動かない〜〉

「ヒャハハハ、まんまと掛かりおったわ!」
「美味しそうなエーテルを貯め込んだ、小僧め。ヒャハハハ」

いつの間にか、お婆さんの容姿が変貌している。
緑色の髪に、青白い顔と肌、ギラつく緑色の眼、かぎ鼻、
そして巨大な乳房を垂らしている。。。
魔女、そう魔女だこれは。

「さてさて、待っておれ待っておれ、ヒヒャヒャ」

「エコイクエコイクマールンバ慈悲無く支配するモノよ、
古き盟約に則りその力を発現せよ〜魂の源泉を吸い込む唇」

〈ブワーンと、耳鳴りがして力、気力が萎える〜〉

お婆さんの腹が見る見る膨らみパンパンになる。

「何て子だい!ちょっと味見したら丹田がはち切れそうだよ」
「おまえ達、二階の座敷牢に運びな!」

二階から、
「ギギーッギギーッギャウギャウ、ギャウン」と耳障りな声を
発しながら人型の狐が下りてくる。

「ルサールカ、怒ってばかりで五月蝿い五月蝿い、嫌だ嫌だ、
ギギーッギギーッギャウギャウ、ギャウン」

「不快よ!この声、嫌だ〜」と、〝みなみ〟ちゃんが耳を塞ぐ。

黒板を爪で引っ掻くような〈ギギーッ〉音を発しながら、狐人間がぼやきながら〝ゆうや〟の足を掴み引きずって二階に上がる。
ゴトンゴトン、階段を上る度に頭を打ちつける。
階段の中程で〝ゆうや〟は意識を失う。

ゾワゾワする悪寒で〝ゆうや〟は目覚める。
目覚めた眼の真上から〝みなみ〟ちゃんが心配そうに覗き込んでいた。

「ゆうや!大丈夫なの?ねぇ、ゆう〜や!」

朦朧とした思考で考える。
多分頭は、たんこぶだらけ、横たわる頭の感触がデコボコ。。。
痛痒い感触が頭全域にある。
薄暗い部屋だ、格子状の木の枠で囲われている。
頭を整理しよう。
1.多分、多分、死んでるよね。
2.でも、生きてるし、みなみちゃんも一緒。
3.でもでも、ここは何処?天国?地獄?異世界異世界の定義って何だっけ?
4.それでそれで、捕まって牢屋に入れられてる。
5.頭ボコボコ、狐人間が粗雑に引きずるから。
6.親切そうなお婆さんは、多分魔女だ。〝ルサールカ〟と
呼ばれていた
7.吸われた、エーテルとかを吸われた。吸われると気力が
萎える。
8.僕が捕まった理由。それはエーテルとかを吸うため!
9.そして揺るぎないこと!『みなみちゃんは、僕が守る。』
そして最後に、
「牢屋の隅の暗がりでずっと笑って見つめる、お前は誰だ!」
と横たわった姿勢から指差す。

「やはり気付いていた様だな。ふふふ。流石だ!」

「当たり前だ!」
「牢屋の広さが分かっているのか?車の車内の大きさしか
ないんだぞ!」
「ほとんど、真後ろでニヤニヤされてたら気づくどころじゃない!
気持ち悪い変態め」

「なな、なんと、特殊能力で感知されたかと焦ったぞ!」

「僕も焦ったぞ、その間抜けさに!」

「ふふふふ、ま、良しとしよう」と、そいつは独り納得する。

暗闇に目が慣れると、この間抜けの牢屋同室者の容姿が見えてきた!
人では無かった。。。肌の色合いは分からないけれど、狼見たいな顔で
何故か、雰囲気優男風のイケメンに感じる。付け加えるなら、
口調からはキザ野郎だ!更に付け加えるなら『かなりの間抜け』。

「〝ルサールカ〟の話が聞こえていたぞ!かなりのエーテル持ちのようだな」
「このままだと、一生アイツのエーテル絞りの道具になるぞ」
「ここは考えるのだな、逃げることを!」

「あるの?逃げる手段」

「ふふふふふ、無い」即答。。。
「ハアア〜、何ですって!」〝みなみ〟が叫ぶ!

「俺は、もう三年はココに居る、ふふふふふ」

〈ガクリ(*´Д`*)