ティルナノーグ【Tir Na Nog】に憧れて ※カテゴリから見て下さいね。新しい順だけど小説が並ぶので読みやすいです。_(._.)_あ、不思議な写真もよく撮れるので文中に貼りますね。

頭の中で奏でる世界。命尽きる前に音符に書き出したいです。ケルト神話の神々の安寧の地ティルナノーグ。【常若の国】と呼ばれるその地に想いを馳せながら現世を綴ります。

【君を捜して編5】夢と出会えた少女と運命の歯車は動き出す。 副題:毎日が幸せすぎて恍惚の海に溺れそう by白鴉

 

◇ 〝ゆうや〟は、森からの黒き渦巻きを一閃抜けて向かってきた白い鴉を、火の鳥に頼み撃ち落とした。実は白鴉:(正体)〝ハクア〟は鴉天狗の姫君だった。〝ハクア〟は、憧れの君に会えた想いを胸に黒焦げになり墜落していく。時を同じくして青空を錦の雲が覆い、正体不明の声が響き渡る、「やっと見つけたよ」と。。。◇

 

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〝ハクア〟の〈デレデレ〉ぷりは、周りの視線気にせずの真実一路純愛一直線。鴉天狗や〝ゆうや〟、〝みなみ〟ちゃんも森の縁に降り立ち野営キャンプとなった。
この世界、様々な種別の生き物?が居り、襲われる可能性もあるが、屈強な鴉天狗ざっと五百羽が陣を張り、護られる形だと安心度合いが違う。
火の鳥〟は、スプリガンを探しに飛び去っていた。

かがり火が煌々と焚かれ真昼のような野営キャンプ。
その真ん中に戦国時代さながらの陣幕が張られ、陣幕に沿って微塵の隙も無く外向きに鴉天狗が仁王立ちに睨みをきかす。
さて陣幕内は、陣幕で仕切られた厨房エリアで〝ハクア〟が
お茶を!お茶を!と〝ゆうや〟に出そうと何度も何度も入れ直しを繰り返している。
ただその〝ハクア〟の表情は満面の笑み。
幸せを噛みしめている。
何度も何度も〝御君:ゆうや〟が美味しいねと言って飲むベストなお茶を目指して。。。
侍従の鴉天狗が、「お茶は、暫しお待ち下さい」と神妙な面持ちで三度目の報告があった。

「僕はいつまでも待つよ。」と、陣幕に映る〝ハクア〟の影姿を
横目に捉えながら答える。
その〝ハクア〟の気持ちが有難く、掛け替えのないものだと思うからね。

そんなかんなの陣幕内の情景。
〝みなみ〟ちゃんもそんな〝ゆうや〟の思考回路は、「良い!」と横でコメントくれる。

「お茶をお持ち致しました!」
と、恭しくお盆を掲げて〝ハクア〟が入って来る。
見るに、その姿格好は純白の羽織に朱色の袴、まるで巫女さん。
腰まである黒髪を白い和紙で結わえ、腰に挿している金色の鈴が、
〈シャリンシャリン〉と静かに響き渡る。
見取れてしまう清廉純白の美少女。

〝ハクア〟が、間近まで来るとほんのりと白檀の香りがする。

「〝ハクア〟ありがとう」と、お茶の小皿ごと受け取る。
受け取る筈が。。。受け取れない、いや、小皿ごと僕の手を握って
〝ハクア〟が手を離さない。
顔を見ると、やはり〈デレデレ〉。。。

「〝ハクア〟、〝ハクア〟!手、手を離さないと!」と、
話すと〈ハッ〉として
「スミマセン( >_<)」と慌てて手を離す。

「私、私、スミマセン( >_<)スミマセン( >_<)」と、
走って厨房エリアの陣幕内に駆け戻る。
〈うう〜ぅうう〉と、嗚咽が漏れ聞こえる。※仕切りは厚い布一枚。

「もう!そんなことで」
と呟き〝ゆうや〟は、厨房エリアの陣幕の前で大きめの声で喋り掛ける。
「お茶温かくて美味しかったよ、〝ハクア〟の手も温かくて
優しかった!長い時間をそれぞれ過ごして巡り会えたんだから
ドギマギせずに家族見たいに行こうね。」

〈ゾワン。。。キィーイン〉と、空気が張りつめ耳鳴りが通過する。
〈グァ〜ガァぁカア〉と陣幕の彼方此方で鴉の鳴き声がざわめき聞こえる。

〈ぴーん〉と張り詰めた静寂の中、〝ハクア〟が真っ赤に上気した表情で
「家族。。。御君と家族。。一族郎党!心せよ」と
〈デレデレ〉しながら厨房エリアから出てくる。

「婚姻の儀は、いつ頃執り行いましょうや」と、言葉が続く。

そっちの解釈か〜またもや勘違い〜、説明が面倒だ、
「〝みなみ〟ちゃん〜どうしようぅ」と助けを願う。
返る言葉は、「自業自得よ!〝ゆうや〟自分で考えなさい」

〈うーー〉隙無く慄然と立ち居振る舞うしかないか。

「そのような事を考える前に、この世界、これまでの出来事
全てが理解出来ていない!説明が必要だよ」
「〝ハクア〟教えてくれるね」とお茶を濁しつつ話題を変える。

今、陣幕の中央に居るのは、〝白鴉:ハクア〟、
〝黒鴉長ぽい:名前不明〟、〝スプリガン〟、
火の鳥:フェニックス〟、そして〝みなみ〟ちゃん。
この陣幕中央には、将棋机と居座があり、そこにみんな着座。
何故か自分は、戦国時代で言う所の大将席に座らされる。
まずは、有識者である皆さんから一体なんなのか?を聞き出すことが
先決なので大将席にそのまま座る。
〝みなみ〝ちゃんも隣に座る。

「先ずは聞きたい事は大きく3つあります」
「聞いても宜しいでしょうか?」

“みなみ”ちゃんは僕と同じ側だから置いといて、
“黒鴉長”、〝フェニックス〝等は、神妙に聞き入っている。
“ハクア”は、ドキドキそわそわの挙動不審。
スプリガン”は、ニヤニヤしている。

「まず、一つ目です」
「この世界は一体何ですか?」

意外にも口火を切ったのは“スプリガン”だった。

「そろそろ落ち着いたので話すとしようか」
「まずは、我々だがみんな仲間だ」
「ある特命を受けてここに居る」
「この世界は、常若の国と呼ばれるダーナ神族が古の魔法の力で
築いた安寧の地。当初住まうは、ダーナ神族とその眷族だった。
長い長い月日の流れと、ダーナ神族の性質でその他諸々の輩も
この常若の国の住民となる」
「俺も教えられた受売り話だが続けて話す、とする」
「軽く年月と言うが悠久の時の流れを指す」
「悠久とも続けば、綻びも出てくる。ダーナ神族が善としない輩もこの
地に巣食うことになる」
「御君を襲った魔女の“ルサールカ”も巣食う魔物の輩だ」
「だが、それら輩の存在はさして問題ではない」
「今起きようとしていることが壊滅的な問題となる」
「古き者共が蘇りつつある。古き者共の蘇りは生きとし生けるもの
終焉を意味する」
「我らはそれを阻止するために、とあるお方に呼び集められた」
「いや、目覚めさせられたと言うべきか、この話は蛇足だな」

やはり、異次元の世界なんだ。
ダーナ神族が、魔法で作った世界なんだ。
そこに僕と“みなみ”ちゃんは迷い込んだ。
戻る方法は? どうやってここで過ごせばイイのか!ご飯は?
思考が〈グルグル〉とめくるめく。
「あ〜〜どうすれば、どうすれば、“みなみ”ちゃんを現代に
戻せるんだよ!」と、独りでに叫び涙ぐむ。
※僕はどうなってもイイ。
ただ、ただ、“みなみ”ちゃんをあの世界へ、そしてメロンパンを
頬張る笑顔を見たい、いや見れなくてもイイからメロンパンを
食べさせたいんだ!彼女を何の変哲も無い平平凡凡な日常に
戻したい!そこに僕が一緒に居れなくても構わない。。。
神さまお願い致します。

“ハクア”が、〈うう〜ぅうう〉と貰い泣きして泣いている。

気を取りも出さなきゃ、まだまだ明らかにしないとならない事が山とある。

「2つ目の質問です」
「“御君”と僕を呼ぶのは何故ですか?」

〈シャリン、シャンシャン〉鈴の音が静かに鳴り響く。
「“御君様”のこのご質問は私めがお答え申し上げまする」
「古の大望を紐解く事は、今回は触れずに“御君様”と呼ばわりまする
部分のみについてお話し奉りまする」
「日中、“御君様”にもお声が届いたと思います天よりの声音、
それは勿体無くもかしこきかしこき“尊き御方”の声音で御座います。
我ら“妖組:あやかしぐみ”は、“尊き御方”の采配を是とする眷族。
今般、不遜 鴉天狗党の跡目を継ぎし私めの心内を有難くも
お察し頂き此の地へと“御君様”をお出迎え警護する役を頂き
馳せ参じた次第で御座います」
「“尊き御方”は、まだまだ不完全なお身体でありお目覚めになったばかり
“御君様”の方々が一同に会することで完全体へと昇華されまする」
「我が“御君様”は私が幼少時より神名を賭してお仕えする御方と心得て
おります」
「それ故に“御君様”とお呼び奉次第に御座いまする」

「“御君”の方々という事は、僕以外にも居るの?」
「はい、伝え聞くに7柱の“御君”さまが居られるそうです」
「我ら“妖組”は、“御君様”にお仕えする唯一無二の眷族と相成ります」
〈シャリン〉と鈴の音。

「最後の質問、これからどうすれば良いのか?
また、元の世界に戻れるのか?」
〈ボワッ〉と熱風が微に過ぎる。
「そのご質問には、私“フェニックス”がお答え致します」
「“尊きお方”の居城、シャングリ・ラに向かいます」
「そこで全ての謎が氷解し、新たな世界が幕開けるでしょう」
「今宵は新月、天空よりシャングリ・ラに誘いましょうぞ!、
“御君様”!陣屋の外へお越し下され」

“みなみ”ちゃんが行こう!と〈コクリ、コクリ〉と頷いている。