【君を捜して編10】樹海の道案内 副題:追撃!思いは優しくそよ風に吹かれ。
◇ 巨人が魔女“ルサールカ”の娘から貰ったブローチ。そのブローチから必殺のナイフが“御君様:ゆうや”を狙う。“リノーチ”の捨身の防御と“ハクア”、“ジーク”、“ミケ”の防御の構えの中、現れたのは慈悲無く支配するモノの女将軍“ベルフェゴール”。妖艶な女魔族から漂うのは危険な力。強大な敵の出現で、隠密裏に引率していた“砂かけ婆さん”が表に姿を現わす。対峙する間もなく、“砂かけ婆さん”は命を賭ける戦いとなるを悟り、孫娘の“砂姫”への今生の品を“ミケ”に託して必殺の技を繰り出す。結果は相討ち。“砂かけ婆さんは”致命傷の中、末期の言葉を遺し砂塵に帰した。“ベルフェゴール”は黒い霧化して逃亡する。◇
〈シクシク〉“猫娘:ミケことくつ下”ちゃんの涙は止まらない。。。
「お婆。。。。」小さく呟く。
一陣の風に乗って、黒い霧と化した“ベルフェゴール”が逃げを打つ刹那。
背筋が瞬間冷却されて心臓が凍てつく痛みを覚える程の〈ゾワリ〉とした空気の脈動が走る。“ミケ”だ!表情が一変している。目が釣り上がり、口が裂け、野獣の牙が光る、その纏う雰囲気は闇そのもの。
“ミケ”がいた場所に彼女の姿は無い。
樹海の森を突き抜けた遥か上空にその姿は跳躍していた。全てを奈落に引きずり込む様な漆黒のオーラを纏って。
「逃すか!“ベルフェゴール”」その声は〈ウォンウォン〉と、共鳴する怒迫力の音量で響き渡る。
その時、僕は“ベルフェゴール”の黒い霧がニャリと笑った感触を感じる。イケナイ!罠だ。
“ミケ”ちゃんは、高高度からの必殺の猫爪!無塵を閃かせ高速の滑空状態に入っている。間に合わない。止めないと!と必死に心で念じながら「“ミケ”ちゃん危ない!罠だーー!」と叫ぶ。
〈パキーン〉何かが割れ砕け、一瞬辺り一面がモノクロになり
空間が〈ドックン〉と慟哭した。あの時と同じだ!
〈どっくん〉今度は。。。僕の体の内側から慟哭が呼応する様に打たれる。
体の異変に戸惑う感はあるけど、無理は承知で“黒い霧:ベルフェゴール”に待ったをかけるが如くに手を突き出しながら駈寄る。
“砂かけ婆さん”が食らったあの斬撃波が頭を過るが、〈どっくん、どっくん〉と湧き上がる熱い息吹に何故かその不安も掻き消される。
〈ギュイーン、ピシッ〉と僕の手の先前方で空気が響く。斬撃波が来たのか。でも弾かれた!その刹那、うー熱い。体が燃える様に熱く滾る。体の真ん中からオレンジの光の迸りを噴出して体全体を覆う。
〈どっくん〉という慟哭の中に自分自身の声を聞く。
「封印を解くは今ぞ!目覚めよ!仁なる勇気の七色の光臨よ。」
瞬間、僕は“ベルフェゴール”の黒い霧を突き抜けてその向こう側に立っていた。駆け抜けた軌跡上の黒い霧は〈チリチリ〉と霧の粒子レベルでマグネシウムの火花のように燃え散り消える。
あっ“ミケ”ちゃんは!。。。〈チリチリ〉と最後の火花が散ったその斜め後方の上空に、〈きらきら〉と光を反射する銀色の粒に覆われて“ミケ”ちゃんは浮遊していた。“ミケ”ちゃんの少し前方に弓状に凹んだ銀色の粒が〈きらきら〉と光を反射している。その銀色の粒一つ一つが優しく優しく微笑んでいるのが分かる。
“ミケ”ちゃんが静かに降りてくる。暫く銀色の粒は“ミケ”ちゃんを包んでいたが〈ふわーっ〉消え去って行った。立ち居る“ミケ”ちゃんが振り返り僕を見て〈ニコリ〉と微笑んだ。もうあの獰猛な漆黒のオーラは纏っていない。
「“御君様”命を助けてくれてありがとうニャ」あたしあたしを“御君様”の臣下にしてくれないかニャ?命を賭してお仕えするニャン!
「臣下だなんて。。。こちらこそお願いねするよ道案内!」
ニャ〜と満面の笑みで手首を丸めて顔を洗う“ミケ”ちゃんこと“くつ下”ちゃん。僕は、“ミケ”ちゃんが小声で呟いた「お婆、ありがとうニャ」をそよ風のように心地良く確かに聴いたよ。
“ミケ”ちゃん!君には笑顔が似合うよ「ミャー」
◇さて、【君を捜して編】の荒木勇也、葵美波、ジーク、白鴉(ハクア)、くつ下ちゃん主要メンバーが出揃い、Shangri-la目指しての冒険が始まる段まで来ました。一旦、他の【夕焼け空編】に話を移します。また、【君を捜して編】の冒険編に逢えるまで一先ずは。。。つづくであります◇